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22 . November
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02 . February
※ この本は完売しています。



既刊その2。

今のところ再版の予定はありませんが、一応載せておきますー。
恋愛もののオムニバス第一弾

サンプルは見やすいように改行を変えてあります。

「きみに恋する、三秒前の微笑み」から抜粋。

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「好きです」


 白く透き通るような肌に、黒曜石の煌きを思わせる瞳。すっと通った鼻梁の下には薄い唇が上品に収まり、指どおりのよさそうな黒髪はさらりと揺れる。すらりとして均整の取れた体は四肢が長く、若干線の細すぎるきらいもあるが、それさえも一種の色気と取れば充分に魅力と言って差し支えないだろう。


(男の子相手に、初めてキレイだなんて思った……)


 久坂(くさか)雫(しずく)は、自分目の前に立つ後輩と思しき少年の顔をまじまじと見遣り、ぼんやりとそう思った。
 彼と付き合おうと思う女の子はきっと大変だろう。だって、彼は下手なアイドルよりもよほど綺麗な容姿の持ち主だ。隣に並ぶだけでもコンプレックスをちくちくと刺激されそうだし、彼に釣り合う子なんて滅多にいそうにない。


(でも、こんな男の子に告白されたりしたら、女の子はそれだけで幸せになれちゃうんだろうなぁ)


 そう、今みたいに、好きだなんて言われた日にはもう……って、好き? 誰が? この子が? じゃあ――誰を?


「……え。あたし?」
「他に誰がいるんですか?」


 僅かに呆れの混じった声にそう返されて、雫は思わずぽかんとしてしまった。この、綺麗な少年から告白されるという幸福を手に入れたのは、紛れもない雫本人であるらしい。
 思わず勘違いじゃないかと問いたくなり、だが、彼の双眸があまりにも真っ直ぐに自分へと注がれているものだから、とりあえず唇を閉じた。それから逡巡すること数秒。ようやく覚悟を決めて口を開こうとした雫を留めたのは、少年本人の指先だった。
 白くて細い、それこそ白魚のような、と表現するに相応しい指先が、雫の唇に添えられる。ぎょっとする雫の目の前で、美しい少年は、それはもう艶(あで)やかに微笑んで、言った。



「ノーの答えは聞きません。俺がほしいのはイエスだけですから」



 正直、不愉快を覚えてもおかしくないぐらい横暴すぎる言葉だと思った。なのに、これも彼の容姿ゆえか、どうにも憎めそうにない。顔が綺麗なだけで人生勝ち組同然よね、とは雫の悪友の言だが……なるほど、確かにその通りかもしれない。今までは首を傾げるばかりだったその言葉に、初めて同意を示しながら、雫はもう一度まじまじと少年を見つめた。


「先輩が告白してすぐに同意してくれるような人じゃないのはよく知っています。――だから、俺に一週間下さい。一週間で、先輩がイエスしか返せないようにします」
「うん……?」
「これから一週間、どうぞよろしくお願いします」


 にこりと微笑んだ彼には、やはり女顔負けの艶っぽさがあり、雫はどこか現実感を失ったままに、やっぱり綺麗な子だなぁ、と間の抜けたことを考えながら、その美貌を眺めていた。
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